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山本兼由准教授らが大腸菌による高濃度のレアメタル回収・蓄積に成功

技術概要

生命科学部生命機能学科 山本兼由准教授らの研究グループが、大腸菌により高濃度のレアメタルを回収・蓄積することに成功しました。大腸菌が金属を結合・輸送しやすい性質を利用し、遺伝子組み換え技術を使うことで特定のレアメタルを大量に取り込ませ、その後大腸菌を破壊してレアメタルのみを採取する仕組み。「大腸菌の育種を最適化すれば、通常の約1000倍まで回収・蓄積能力を高められる可能性がある」と山本准教授は話します。

国内で使用されるレアメタルは、産出地の偏在性や採取における環境破壊問題から、その大半を輸入に依存していますが、この方法を用いれば海水中に微量に含まれるマンガンやモリブデンなどのレアメタルの回収・蓄積を実現。環境への負荷が少なく、新たな産業の創出も期待されています。

原子間力顕微鏡で観察した大腸菌

山本准教授は本学においてゲノム生物学を研究。今回の開発に関し、次のように話します。

「研究対象の一つとして、大腸菌を用いて人体にも深く関わる金属の応答性について考究してきましたが、開始当初、レアメタルの開発に結び付くとは思ってもいませんでした。
大腸菌を用いる有効性は、海水という日本の豊富な水資源を活用できることは然ることながら、大腸菌という微生物が本来持つ発酵の力を用いることで、環境を整えさえすれば計り知れないほどの開発量増加を見込めることです」

大腸菌の金属恒常性を生かし、山本准教授は福島第1原発の問題で注目される化学物質を含め、汚染水や土壌汚染対策のための研究も同時並行で進めています。

山本兼由准教授

「大腸菌は遺伝子研究の対象として長い歴史を持ちますが、未解明分野も数多く残る。こういった応用的基礎研究に深く取り組めるのが本学生命科学部の特徴で、今回の研究の助けにもなりました。
2年次から研究室に入れるカリキュラムも生かし、学生とともに“世界の法政”に貢献できるよう研究に励みたいと思っています」(山本准教授)